たかしまを彩る人 color.2 農家民宿「棚田ハウス」橋本昌子さん


日本棚田百選にも選ばれている場所、高島市畑(はた)。 その標高300~400mの傾斜地に階段状に織りなす棚田の風景はどこか懐かしく、郷愁に駆られる原風景として知られる。


初夏には田んぼの水鏡が空を映し、伸びゆく稲が緑深まる頃にはそれが緑の階段に。秋になればそよぐ稲穂に赤とんぼが揚々と乱舞してうつろう季節に心打つ景色が広がっている畑地区。 

京都からご主人と移住してきた橋本昌子さん。畑地区の美しさに魅了され京都から週末をこちらで過ごしているうち、拠点がシフト。


現在、改装した古民家でゲストハウスを営みながら畑地区の魅力を伝えている。


白猫の店長ゆきちも橋本さんと一緒に道案内してくれました。



また、ゲストハウスを営む以前から手掛けている「棚田ジャム」のオーナーでもある昌子さん。 彼女が作るジャムは無農薬で育てた果実に、砂糖とレモンだけで仕上げたシンプルなもの。

比良山系の伏流水と高低差100mの地形が育んだ、里山の恵みを感じるジャムはじっくり楽しみたくなる味。



2015年。橋本さんが畑地区に根を下ろし棚田ジャムを営み始めると里山の高齢化を感じることが増えた。 


十五年ほど前に訪れた頃から少しずつ地域を駆け回っていた子ども達が巣立っていき静かになっていった。 精力的に田畑の守りをしていた住民も年を重ね、次第に担い手不足による放棄地も見受けられるように。


 仕方ないことなのだろう、けれどもこの景色の素晴らしさを残せないだろうか。


そのような思いを巡らせながら2018年、ご夫婦で農家民宿「棚田ハウス」を開業し、地元の住人の協力も得ながら地域伝統の保存食・畑漬けや、味噌作りなどの手仕事のワークショップなどを行うように。


そうして市内外各地から訪れる参加者は、のんびり流れる時間に身を置いて畑地区での農家体験をして過ごす。


ともに汗を流したあとに、食事を楽しんだり、ある時は虫の鳴く声を聴きながら眠りにつく風景。彼女の描き始めるものは色濃くなっていった。 


 そんな想いの矢先、今春、棚田ハウスの前にある約18アールになる5枚の休耕田を借り受けることになったのを機に、米作りを通して棚田を保全する有志の会「せぎなお会」を発足。


5月下旬の田植えを呼び掛けたところ、市内外各地から40名が参加した。

泥に足を入れ、ひとつひとつ苗を植えていく。参加した大人も子供も一緒になって田植えをした賑やかな日となった。

手植えの様子が分かる足跡と苗で、水紋のよう。



「田植えから刈り取りまでにすることは色々。実際に植えてみると手間暇のかかることがよく分かる。先日も遠方から草取りをしに来て下さっていましたよ。」と昌子さん。


そうやっていろんな方が少しずつ、携わってくれているのだという。


地力がある田でみずみずしく伸びる稲の成長は、日々の楽しみとなった。棚田ハウスから広がるこの風景が愛おしく映る。


「都会暮らしを楽しみたくて、生まれ育った富山から京都へ行ったの。でもね、気が付いたら故郷よりもさらに自然豊かなこの地にご縁が出来て住んでいるの。」と昌子さんはあどけなく笑った。


 順調にいけば9月中旬が刈り取りだそう。ゆくゆくは刈り取った米を使った自家製の麹づくりもチャレンジしたいと話す。  


一緒に植えた稲の収穫時期が来れば皆で実りの喜びを分かち合う。そんな豊かな景色はもう間もなく。


棚田ジャムさんおススメのルバーブジャム(¥1,000/約100g瓶)はシベリア原産の多年草植物を使った甘さ控えめのジャムで大人に人気。その甘酸っぱい風味は、バターと一緒にパンに塗ったりヨーグルトにも合います。
取材日も、遠方からふらりと立ち寄ってこられたお客さんもルバーブジャムを購入。


店長のゆきちによるおもてなしタイム。なんとも愛くるしい看板猫です。



ダムカードならぬ棚田カードはコレクターに人気で、津々浦々から来られるそう。

(取材:川島沙織)


棚田ハウス 

【所在地】滋賀県高島市畑487-1

【お問合せ】info@greensam323.com

棚田ジャム フェイスブックページ

0コメント

  • 1000 / 1000