Go for it! #19 COLLAGIF(コラギフ)松宮麗美(まつみやれみ)さん
「ブランド名は素敵なコラボで素敵な贈り物という意味です。大阪から高島に来て、子育てをしながら周りに助けていただいて。大好きな高島で、コラボ&ギフトして恩返しをしていけたらと。そんな想いで付けました。」
そう話すのは、高島市安曇川町で、ヒューマングレードのジビエを使った犬のおやつを製造・販売するCOLLAGIF(コラギフ)の松宮麗美(まつみやれみ)さん。
鹿肉は、毛並みや毛艶が良くなった・食いつきが良い等の反響があり、犬のスーパーフードとして需要が高まっている。
商品は、主に乾燥させジャーキーにした気道、肺、心臓、スジ、背ロース、グリーントライプ。
ジビエジャーキー「気道」
ジビエジャーキー「肺」
ジビエジャーキー「スジ」
ジビエジャーキー「心臓」
ジビエジャーキー「背ロース」
ジビエジャーキー「グリーントライプ」
商品は780円〜。現在ラベルデザインを変更中とのこと。※パッケージ写真はいずれも2023年7月取材当時のものとなります。
偏食だったというバーニーズマウンテンドッグの飼い犬シアちゃんが好物のトライプを食べるようになって、さらに毛艶UPしたそう。
「うちの子はペットフードも食べてくれず、おまけに肉すらペッと吐き出すほどの偏食でした。2年前、同じ犬種を飼っている方の勧めで、グリーントライプを食べさせてみると、良い食べっぷりで感動しました。」
グリーントライプとは、反芻(はんすう)動物の未洗浄の胃袋のこと。これは、牛や羊などの草食動物が一度飲み込んだ食べ物を再び口に戻し咀嚼する独特の消化方法。
この部位の内容物や栄養素が腸内環境を整え、美容と健康に役立つとブリーダーに重宝されている。
鹿肉の良さを実感した麗美さん。偏食や小食、加齢など健康を気遣う飼い主さんへの助けになればと一念発起。
麗美さんは、園児から中学生までの5人兄弟の子育てと、フルタイムの勤務で生活を支える傍ら、事業を進めていると話す。
「私一人では、ジビエで犬のおやつ作りをしようなんて思いつきませんでした。周りの人のお陰です。」としみじみ。
昨年、シングルマザーとなった麗美さんは、友人の支えや、家族の協力を得たからこそ、頑張って来られたと振り返る。驚くほど一日があっという間に過ぎていく日々。
子どもたちを十分に見てやれず、負い目を感じることは多々。けれど、置かれた環境を悲観したり、人のせいにはせず、心もち次第で状況は変えていけること。
それが大切なのだと、子どもたちにはその背中を見ていてほしいと話す。
「できることはする、と子どもたちは各自で朝ご飯の支度をしてくれたり、気がついた子が洗濯をしてくれたり。」
そんな日々を彼女は力に変えて。
ジビエは全国的にも販路、仕入先の確保が課題という。
麗美さんは現在、長浜まで鹿肉を調達しているが、自然を相手にするからこそ、いくつかの頼り先が必要になると市内での仕入れ先も模索している。
「高島は猟師は多いですが、食肉用に処理加工する場合、作業負担が増す分、対応できる方になかなか出会えなくて。現状は厳しいです。」
高島市農村整備課によると、駆除対象となるニホンジカの頭数は、近年は横ばい傾向という。
今後は、担い手育成という地域課題も。少しでも命を無駄にせずに森と人とを好循環化するには、きっと平坦な道はないけれど、今の自分にできることは、ある。
「他社にはないグリーントライプを使ったチップの商品開発もしています。製造で大変なのはグリーントライプの匂い。かなりのものですよ~!」と笑う。
グリーントライプを混ぜてチップに。
それでも。元気になっていく犬の姿や飼い主の喜ぶ姿に思いを馳せて。この事業も、ペットフードにとどまらず、高島の地域循環に役立ちたい。そう思うと、大変なことも一歩一歩が楽しくなる、と。
ただ現実問題として、子育てしながら生活のために働くことは、本人の意欲に反して勤務時間の融通や待遇面で壁にぶち当たることがある。それを痛感し、先日、前職を退職。そして子どもたちは夏休みに突入。
「9月の再就職の前に、8月からお遍路に行くんですよ。以前、友人の体験談を聞いてから、興味が湧いて。私もお遍路に行ってみようと思い、家族の協力を得て下の子達と一緒にお遍路しながら販売する計画を立てました。」
お遍路と販売。厳しい状況下での試みとなるのは必至。けれど、現地での様々な出会いにも心が躍る。
「売り切るまで帰りません。」
はにかんで、強い意志を滲ませた。
(取材・撮影/川島沙織)
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