Go for it! #14 作家・楠 秋生(くすのき あきお)・ 太田 裕三子さん
あの景色、あの暮らし、あのひとコマ。日々消化されていく中に色鮮やかに脳裏によみがえるのは、不思議と子どもの頃のことが多い。
子どもの頃に当たり前だった地域の文化、風習は、時代の変化とともに時には廃れ、色褪せていく。
あの時代に見聞きしたことを本、紙芝居という形で子どもたちへ、後世に繋ぎ、残せたらー。
滋賀県児童図書研究会による児童書「ぼくら滋賀っ子 おひさまいろの宝箱」。シリーズの編集部長を務める太田裕三子さん。自身も「楠秋生(くすのき あきお)」というペンネームで執筆に携わる。
同会では、県内の作家や元教員、読書指導員など会員のうち12~3名の作品を編集。滋賀の伝統・人物・歴史・活動を題材に、子どもが主人公の物語となっていて、彼らの生き生きとした様子が描かれている。
「宝箱シリーズはあと2冊で終了予定です。話の舞台となっている地域が、なるべく偏らずにできるよう今までの話を確認しながら本づくりをしています。」
書き上げた原稿は月に一度の会合で合評し、練り上げる。一作品あたり4000字。振り分けられたテーマを元に取材、執筆、校正、編集作業を経て、2年かけて一冊が生まれる。
滋賀に伝わる昔話から28話を収録した「ひともっこ山 - 湖の国にむかしむかし-」を1979年に出版した後、児童書4作品が刊行されている。また、2013年に刊行した「滋賀の子どものたからばこ」(サンライズ出版)シリーズ2作品、「宝箱」(サンライズ出版)シリーズは3作品がある。楠秋生として執筆参加は、2020年、「宝箱」シリーズ4作品目から。
「もともと興味ある分野だったのですが、子育てを通じて、食や自然に関心が深まりましたね。色んな事をしています。」と笑う裕三子さんは、6人の子を持つママでもある。
ご主人の仕事の都合で、兵庫県から高島市に移住し、今津に住み始めてから14年。にぎやかな日々のなか子どもたちは成長し、4人を就職や学業で県外へ送り出した。
裕三子さんは有志団体「オーガニック給食委員会」に2013年より所属。そこから縁が繋がり、協同で無肥料無農薬で米作りをしたり、小学校へ読み聞かせのボランティアをしたりと幅広く活動している。さらに、月に一回オープンのオーガニックや自然農法の食材を扱うお店「夢紡ぎ未来屋」の運営にも携わり、5年目を迎えた。
以前、大人だけではなく子どもにも関心を持ってもらいたい。と企画した中学校PTA事業の食育講座も、印象に残る活動だった。と振り返る。
2018年、児童文学作家の今関信子さんの講座を受講し紙芝居作りにもチャレンジ。伝えることの難しさと奥深さを味わいながら蜜蜂目線で環境の保全を考える『こころにたねを』を描き上げた。
その2年後、長い年月をかけて野菜や果物の特徴を固定化させた「在来種の種」と、双方の利点を掛け合わせた「ハイブリット種(一代交配)の種」のお話『たねをつなぐ』で、農業に従事する兄弟の分岐を描いた。
合理性を追うことの側面も描かれている「たねをつなぐ」。短期的に見ると、それが良かれと思って勧める人、喜んで使う人だっている。物事の本質を伝える上で、登場人物を悪人として描くことに違和感を感じたと話す。
「学校で『たねをつなぐ』の読み聞かせをしたら、真摯に受け取る子や、買い物で食材の表記を確認してみると目を輝かせる子も。わずかな時間でも、手ごたえを感じました。」
2022年5月、新たな試みとして、近年減少している蜜蜂の保全を目的とした「蜜源プロジェクト」を有志でスタート。マキノの耕作放棄地を利用し、初秋の開花に向けてコスモス畑作りに取り組んでいる。
「今後、蜜蜂と少年を描いた作品を考えていて。その前に、実体験できたらと思っていたところ、ご厚意で土地をお借りすることになって。瞬く間に始動したものの、人手も足りず、試行錯誤中です。まずは草刈りと整地作業から。苗植えと同時並行ですね。」と忙しい合間のハードルに苦笑いしながら、なにやら楽しそう。
増え続ける耕作放棄地の活用として、蜜源を作る取り組みは有効とされ、他府県でも推進されている。
また、自然界の循環の一端を担う蜜蜂の保全は、巡り巡って私たちの食にも深く関わってくるのだ。
目前に広がるコスモスの群生を思い描き、繋いでいく未来に。
裕三子さんと大人たちは、「さぁ、やるぞ。」と、袖をまくった。
場面で伝えるよりも読み終えてから伝わるメッセージに重きを置くのが紙芝居という。
彼女の様々な活動も「種」を蒔き終えてから、次世代へ伝わるものごとは多そうだ。
作家 楠秋生(くすのき あきお)
太田 裕三子さん
koyukichan.mama24@gmail.com
090-9717-7345
【蜜源プロジェクトをお手伝いくださる方募集】
ガーデニングに詳しい人や心当たりある方、お手伝いに興味がある方、太田さんまでご連絡を。
太田さんの紙芝居の読み聞かせは全国可能・応相談。紙芝居の英訳してくれるボランティアさんも募集だそうです。
買ってきた惣菜ではなく、簡単なものでも家で作ることの大切さを伝えたくて毎日の晩ご飯をのせているブログ
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