たかしまを彩る人 color.07 SUZAKI CAFE 洲嵜トモ子さん
青葉鮮やかに生い繁り、山の立体感が増す5月。
この日は「大人の休日」を勤しむコンセプトで、洲嵜トモ子さんが不定期でワークショップを開催している「SUZAKI CAFE」(今津町浜分)の苺摘み体験「いちごカフェ」に伺った。
周囲が開け、ぬけ感の良い畑には、東西に長く連なる苺の畝。そこに133株の苺がすくすく育っていた。
食べ頃を迎えて艶やかに赤く実った苺は、パツッと瑞々しく弾ける音とともに摘み取られていく。
今年でこのワークショップも7年目。この日は高島のボーイスカウト活動としての利用で、参加した子ども達は実った苺を摘み、パフェやスイーツ作りを体験。
食べごろの苺を説明する洲嵜さん
また、びわ湖を一望できる洲嵜さん宅の敷地周辺で自然体験のカリキュラムを楽しんだ。
普段は県庁職員として従事している洲嵜さん。
「SUZAKI CAFE」は、カフェといっても彼女が提供しているのは飲食ではなく、あくまで「場」の提供だ。
2019年に親子でお邪魔させていただいたいちごカフェ
摘んだヨモギを選定して洗って
ヨモギを茹でて
すり潰して
ヨモギで包み、あんこをのせて苺大福に。
自身が隊長を務めるボーイスカウト高島第3団の野外活動の一つとして、場所を提供したり、日々を忙しく過ごす大人達に癒しと憩いとワクワクする機会を提供している。
とりわけ、大人が利用するイベントに関しては綿密に企画して集客するというものではない。
「タイミングが合い、ご縁のあった人と一緒にイベントを通じて知識や経験をシェアして楽しむスタイルです。」と話す。
周囲の人がトモ子さんについてイメージを挙げると、「山登りやランニングが好きな人」、「ボーイスカウトの隊長」と、どこから見てもアクティブな人物像。
「でもね、子どもの頃は田んぼの畦でタンポポを摘んだり、一人で上手に遊ぶ大人しいタイプ。自然が好きで、草木を延々と観察して、あっという間に時間が経っていたことも。」と振り返る。
じっくりと取り組むことが性分なのか、昔から継続しているものが色々とあることに気がついた、と話す。
ボーイスカウトの指導も今年で20年。さまざまな学年の児童が縦割りとなり、季節に応じた野外活動や奉仕活動のカリキュラムを楽しみ、学ぶ。
月に一度の活動では、子どもには必要に応じて要点を伝え、自主性を見届ける。
取材した日、足早にやってきた梅雨の気配で琵琶湖の波も立っていた。上級生が見守る中、遠巻きにして遊ぶ。
これは保護者にとってなかなかに忍耐力が試される向き合い方ではないだろうか。それに、子どもが親以外の大人に成長を見守られる経験は、今では貴重なことかもしれない。
ボーイスカウトでは、前回会ったときよりも成長している子ども達の姿に心動かされ、彼らから元気をもらう。そんな今ではボーイスカウトも山登りも生活の一部となっています。とトモ子さん。
「早いもので、仕事も勤続39年。自分自身や何事に対してもこうあらねば。というハードルを設定をしないこと。それがここまで続けられた理由かもしれません。」
結婚後に仕事を辞める選択もあったけれど、理想的なお嫁さんや母親像に大きく囚われることなくいられた。
気負わず周りのサポートも受けながら、さまざまなライフワークを継続できたと振り返る。
自身に誠実でいるからこそ、ほど良い塩梅を重ねていく。己への許容は時に、人への許容にも繋がる。
「SUZAKI CAFE」では、季節のイベントや、天気が良ければ野点や焚き火、満月ヨガ、SUPなどロケーションを生かして様々な方と活動をしている。
お天気が良ければ、子ども達は琵琶湖に入らずにはいられない(2019年)
また、農作業に長けた姑にもサポートしてもらいながら、自家栽培の小豆を使った丁稚羊羹作りや、味噌作りもしているそう。
陰ながら洲嵜さんのサポートをしている苺づくりの名人のお姑さん。
「これは私自身にも言えることですが、季節の手仕事体験の参加者には、仕事や核家族化によって地元の食文化を継承する機会なくこれまで来てしまった方も多いです。だからワイワイと気軽に手仕事をすることが、とても良い機会となっています。」と話す。
退職まであと数年。さて何をしていこうか、とそんな思いも。でもきっと、これから我が身に訪れる機微を楽しみつつ、またこれまで通り活動を続けていくのでしょうね。と、トモ子さんは軽やかに笑った。
(2019年撮影)
(取材/撮影 川島沙織)
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