Go for it! #11 フリーライター 志賀清美さん
明瞭に伝える情報紙の記事を得意としながら、その文体の中にはどこか優しいまなざしを感じる筆力。
ライターを始めて、気が付いたら15年に。もうそんなに経っていたのかというほど、あっという間だった。と。
志賀清美さんは、高島市で生まれ育った。2007年、育児とのバランスを考え無理のない範囲でできる仕事を探していた頃。目に飛び込んだのは、地域情報サイトの在宅ライター募集の広告だった。
テーマに沿った記事を作成するという筆記試験があったとはいえ、経験不問で週2、3回の業務という募集内容は、仕事を辞めてブランクがあった彼女にとっても前向きにチャレンジができた。
当時、紙媒体をメインとせず、市内のお店やイベントを取材しウェブ上に掲載していくスタイルは高島市においては珍しいものだった。
県内の広告代理店と連携し、地元企業が高島のエリア担当として立ち上げたプロジェクトで、そのサイトを見て、お出かけの参考にした人も多い。
「この仕事をするまで、市外の方から高島を褒められてもお世辞と思ってしまっていましたね。」
地元という強みを持つ一方で、実のところ市内外の方におススメできるものは、あるだろうかという想いも少なからずあったと振り返る。
しかし、取材を重ねるごとに、高島の魅力に出会い、移住者からよく耳にする〈地元の人ほど当たり前で気が付かない高島の良さ〉を再発見する仕事でもあった。
「色々な場所を訪ね歩き、様々な人やモノに出会うたび、高島がどんどん好きに。今ではとても愛しいです。」と志賀さんは笑う。
「取材を通じてお知り合いも増えました。職業や年代が違う人たちから教わったことは、計り知れません。」
取材で大切にしているのは、人となりと魅力を引き出し、文に起こすこと。そして必要な情報を簡潔明瞭に伝えつつ、預かった想いを限られた文字数の中に添える。記事のボリュームに対して向き合う時間が長くなるのは想像に難くない。
これまでの取材した方は、一千人くらい。と言葉にした本人が少し驚きを見せた。
取材へ赴き、写真を撮り、自宅に戻って記事に起こす。書いては削り、削っては書く。
人が違えば題材も違う。熱い想いや奮闘の足跡を目の当たりにし、目頭が熱くなることもあった。
人の数だけ様々なドラマと、その哲学に触れての繰り返しの15年は、彼女にとって濃くもあり、実にあっという間だったのではないだろうか。
「取材先での印象は、自身の話をじっくりと聞いてもらう機会が少ない方が意外に多いということ。こんな話を今までしたことがなかった、とおっしゃる方もおられます。」
他愛もない話から、思いがけず引き出されることも。志賀さんは、そんな方たちの取材後のすっきりと晴れ晴れとした表情に出会ってきた。
内に在る想いや馳せる夢を、人はどこまで他人に伝えるだろう。いつそんな機会があるだろうか。
実は、聞いて欲しいと思う方はたくさんおられるのかもしれない。ただ話をして、明日への活力のきっかけになるのなら、お手伝いをしてみたい。と、考えるようになった。
誠実に取材を重ねて培った「聞く」というスキルに、今後の役割をもうひとつ見出した志賀さん。彼女の綴る記事から伝わるぬくもりは、紡がれる言葉だけではなく、リズムや行間にも宿る。それは聞き手としての温かな想いと、彼女の持つ間(ま)なのかもしれない。
「高島で生まれ育ち、これまで様々な方にお世話になった、その恩送りができたら。仕事以外でも誰かの話を聞く機会を持つことで、明日への元気を生み出せる場を作れたら。と思っています。」と語った。
(取材・撮影/川島沙織)
お問い合わせ先
フリーライター 志賀清美
kiramekinote0726@gmail.com
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